実質賃金3か月ぶりマイナス 物価高に賃金追いつかず

厚生労働省は、物価変動を考慮した8月の実質賃金が3か月ぶりに減少したと発表しました。実質賃金は、5月まで過去最長の26か月連続マイナスを記録していましたが、賞与が給与総額に占める割合が大きい6~7月は、賞与の伸びが好調だったことからプラスを記録しました。8月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)では、1人当たりの実質賃金は前年同月比0.6%減でマイナスに転じました。

 

◆主な数値

・名目賃金に当たる現金給与総額は、3.0%増の29万6,588円で、32か月連続のプラス。

・統計に用いる消費者物価指数は7月の3.2%を上回る3.5%上昇で、差し引くと実質賃金は減少。

・現金給与総額の内訳は基本給を含む所定内給与が3.0%増の26万4,038円で、31年10か月ぶりの高い伸び。ベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率が平均5%を超えた2024年の春季労使交渉の結果が反映されている。

・残業代などの所定外給与は2.6%増の1万9,599円。

・現金給与総額のうち、賞与などの「特別に支払われた給与」は2.7%増の1万2,951円で、前月の伸び幅(6.6%)より縮小。

・現金給与総額を就業形態別にみると、一般労働者は2.7%増の37万7,861円、パートタイム労働者は3.9%増の11万33円。

・主要産業別では全産業で上昇。

 

福岡資麿厚生労働大臣は記者会見で、「名目賃金の内訳を見ると、基本給を含む「所定内給与」の対前年同月比がプラス3.0%ということで、これは31年10か月ぶりの高い伸びとなっており、そうした意味においては賃上げの明るい動きが着実に現われてきていると認識しています。関係大臣と連携し、価格転嫁や生産性向上の支援等により、中小企業等が賃上げできる環境整備に取り組んでいきたいと考えています」と述べました。

賃金は上がる傾向にあるものの、物価はもっと上がったということですが、中小企業や非正規労働者にも効果のある具体的な政策が期待されます。

衆議院が9日に解散し、選挙戦が始まりましたが、賃上げは経済政策の主要な争点になりそうです。

【厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年8月分結果速報」】

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r06/2408p/2408p.html